メーカー営業の志望動機と自己PRの差別化方法
新卒及び転職で大手日系メーカー2社に営業職として採用された経歴を持ち、社内で人事部の協力依頼を受けてリクルート活動に従事した経験がある筆者が、ライバルとの差別化に悩む転職検討者の方向けに志望動機と自己PRのアドバイスを紹介します。
[ポイント]:採用する面接官の視点に立って話す内容を考える
何故この業界なのか
まず以下の3つの階層は全て説明できるようにしましょう。
階層2:何故この業種なのか?
階層3:何故この会社なのか?
それぞれ詳しく解説していきます。
階層1:何故メーカーなのか?
この質問に答えるためには、他業種に対するメーカーの特徴を理解し、その特徴が自分の志向・能力に適していることを説明する必要があります。
メーカーの特徴の例
・日本が世界に技術力を誇る業種
・グローバルに事業展開をしている
・研究開発→調達→製造→販売→出荷→納品→アフターサービスという流れ
メーカー志望動機の例
・モノづくりの仕事に携わりたい
・グローバルなフィールドで活躍したい
上記は、メーカーを志望する学生であれば、ほぼ全員が考えつく内容でしょう。他の応募者と差別化するためには、ここから深堀して面接官に響く説明が必要です。
まず、モノづくりということは、無形商材ではなく、有形商材を販売する会社となります。無形商材とは、金融商品、人材紹介や広告、インターネットサービス、研修やコンサルティング等です。
メーカーで働くということは、商材を売るだけでなく、製造側の立場になって仕事をしたいという点も重要になります。つまり、商社ではなくメーカーを志望している理由の説明が必要です。例えばメーカーの社員だからこそできる、技術者との商品企画・広告/宣伝・原価管理などの業務に言及すると良いでしょう。
- 自分の販売した製品が市場で使われているのを目の当たりにしたい
- 開発から製造、販売までの一連のプロセスを洗練化する活動に魅力を感じる
- 日本の経済成長鈍化が継続する中、グローバルに事業展開している会社で働きたい
なお、グローバルな環境で働きたいという根拠に語学力・留学経験を活かしたいから、という説明をする就活生が多いですが、志望動機として訴求するのはお勧めしません。
なぜなら昨今では語学力・留学経験は全く珍しくないからです。更に、語学は日系の会社で仕事をする上ではそんなに流暢でなくても成り立ちますし、出張や駐在をすれば直ぐにできるようになるためです。
階層2:何故この業種なのか?
この質問への回答が最も重要になります。
自分が検討していない業種も調べて何故他業種ではダメなのかを必ず答えらるようにしましょう。これは面接で答えるためだけに考えるのではなく、自身が納得して本心で自信をもって説明できるようになるためにも必要です。
建設・住宅・インテリア
繊維・化学・薬品・化粧品
鉄鋼・金属・鉱業
機械・プラント
電子・電気機器
自動車・輸送用機器
精密・医療機器
印刷・事務機器関連
スポーツ・玩具
その他メーカー
その業種である必要がある根拠は以下の観点を網羅して説明できると良いです。
- 志向に基づく説明
- 能力に基づく説明
- 業種の成長性に基づく説明
志向に基づく説明とは、「~が好きだから」、「~にやりがいを感じるから」といった説明です。ここで注意が必要なのは、例えば「自動車の運転が好きだから、自動車メーカーを志望しました」と一人のユーザとしての好みだけを説明するのではなく、「移動手段・家族/友人との個別空間を提供できるモノとして人々の生活を豊かにすることが可能であるため、自動車という業種に魅力を感じている」といったように、製品を顧客に提供する立場になる視点で説明をすることが重要です。
能力に基づく説明とは、以下の3つのスキルに基づく説明です。これらのスキルの内、自分に何が当てはまるのかを考え、説明できるようにしましょう。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、その職場で働くうえで知っておくべき専門的・技術的なスキルです。仕事を円滑に進めるために必要なスキルとされています。 「Excel」や「Word」、「プログラミングのスキル」などが挙げられます。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、対人関係に必要なスキルです。 全ての社会人に必要な、コミュニケーション、リーダーシップ、コーチング、プレゼンテーションなどのスキルを指します。 職場の人間関係をより良くし、企業全体の生産性を高めるために必要です。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、課題解決に必要なスキルです。 情報分析、総合的判断、また物事の本質を的確に見極めるスキルを指し、管理職や経営者に求められます。
【出展】転職サイト ビズリーチ
業種の成長性に基づく説明とは、以下の様な点を踏まえた説明です。
- 5-10年後その先も市場が存続するか
- 競合と戦える競争力があるか
- 変革が起きる市場か
IT技術の変化、新興国の台頭、政府の環境保全政策等により、市場環境が大きく変化してく中でもその業種が存続できることは非常に重要な点です。
例えばテレビ・携帯などは中国メーカーの安価な製品により日本企業の製品はシェアは大きく減少しました。また、自動車業界は欧米を中心とした環境保全政策によりガソリン車から電気自動車へシフトが進んでおり、従来のガソリン車時代には存在しなかったTesla等の新興メーカーが台頭しています。
こういった事業観点での志望動機を説明できると、即戦力であること及び貴方が長期的に働く意思があることが伝わります。
会社は応募者の自己実現を手助けするためだけに採用するわけでなく、会社の事業に貢献してくれる人材か否かを判断して採用しますので、この観点は非常に重要です。
階層3:何故この会社なのか?
この質問は経営理念・ビジョン・社是を理由に語るのが良いです。これらは基本的には各会社固有の内容であり、実際に入社して働く上でも共感できるか否かは働くモチベーションに影響します。
業界トップメーカーである点が正直な志望理由であると思いますが、言い方には注意しましょう。例えば、「御社は業界を牽引するメーカーであり、幅広い事業・製品群を有していることから、色々な経験を積みながら活躍する機会があると考えたからです」のような感じです。
経営理念、ビジョン、ミッション(社是)、バリュー、スピリット(社訓)の違いと目的│HowCareer (career-change.biz) 【出展】Hot Career
なお、同業他社への応募も検討していますか?と聞かれたらYesと答えましょう。他社比較をするのはビジネス上の基本であり、決して悪いことではないです。他社を調査・検討していないと記念受験であることを疑われることもありますので留意しましょう。
何故営業職を志望するのか
事務系職種の選択肢としては、営業・企画・管理・宣伝・広報・経理・総務・人事・購買・法務などがあります。メーカー営業の具体的な仕事内容とやりがいは以下リンクの記事を参照ください。
会社にどんな貢献ができるのか
この質問への回答は、貴方の立場によって方向性が異なります。転職者として応募する場合、この質問は非常に重視されます。いずれの場合も、必ず会社が提示した「求める人物像」に沿った内容を説明することに留意しましょう。
転職者の場合、当然ながら前職で培った知識と経験を訴求することになります。職務経歴書・面接で説明する内容は各社の求める能力と人物像に応じてカスタマイズすることが重要です。前職で色々な経験をされたかと思いますが、一番力を入れたことを伝えるのではなく、相手が聞きたいこと(=企業の求める能力があることを証明する実績)を伝えることに留意しましょう。
最後に
日本には世界に名を誇る大手メーカーが多数存在するため、とりあえず有名だからという理由で入社する方は少なくありません。
しかし、仕事ですから当然辛いことや泥臭いこともあります。その際、その事業・製品に興味を持って入社した人とそうでない人では、モチベーションの維持に大きな差が生まれます。
興味がない方は仕事上で困難な目にあった際に仕事の継続が難しいと感じてしまいます。
一方、興味があれば、知識が無くても入社後にいくらでも知識は挽回することが可能です。
会社の名前の大きさに惑わされず、読者の皆様が無事に本当にやりたい仕事に就かれることをお祈りしております。