工作機械の営業はBtoBの営業となるので馴染みが無い方が多いでしょう。
顧客は機械部品を製造する全世界のメーカーでありグローバルに営業活動を行います。
工作機械業界には工作機械用の部品を製造している専業部品メーカーとマシンとして完成したものを製造するメーカーに分かれています。
本記事を読めば、工作機械業界の概要と営業職の働き方について理解することができます。
工作機械とは
工作機械の使途を簡単に表現すれば、「機械部品を必要とする形状・精度に効率よく加工すること」です。あらゆる機械やその部品類は工作機械によって作られるため、工作機械は全てのものづくりを支えています。
工作機械は、広義には「切削、研削、せん断、鍛造、圧延等により金属、木材、その他の材料を有用な形にする機械」と定義されますが、日本工業規格(JIS)では次のように定義しています。「主として金属の工作物を , 切削 , 研削などによって , 又は電気 , その他のエネルギーを利用して不要な部分を取り除き , 所要の形状に作り上げる機械。ただし , 使用中機械を手で保持したり , マグネットスタンド等によって固定するものを除く。狭義であることを特に強調するときには , 金属切削工作機械と表現することもある。」
工作機械について | 一般社団法人 日本工作機械工業会 (jmtba.or.jp)
工作機械メーカーとは
工作機械メーカーにはどんな企業があるのかをインターネット上で調べようとすると”工作機械メーカー” と “工作機械業界” の2種類の情報が出てきます。
この二つは何が違うのか分かりますか？
工作機械メーカーとは機械部品を加工することが出来るマシンの完成形を製造するメーカーです。
【代表的な会社】DMG森精機、アマダ、ディスコ、マキタ
一方、工作機械業界と言うとマシンを完成させるための部品を製造する部品メーカーを含みます。
例えば、工作機械の動作を設定・制御するコントローラーを作る会社があります。
【代表的な会社】ファナック、シーメンス
工作機械の加工部である切削工具（ドリル等）
【代表的な会社】不二越
工作機械の構造部品となるボールねじなどのアクチュエータ
【代表的な会社】THK、日本精工、日本トムソン
工作機械のボールねじ、加工部分を駆動するモーター
【代表的な会社】安川電機
売上が大きい日本の工作機械業界のトップメーカーの一例は以下です。
| 工作機械業界のメーカー | 製品 |
| マキタ | 総合電動工具メーカー（電動工具、木工機械、エア工具、園芸工具） |
| ファナック | 工作機械の動作を設定・制御するコントローラー |
| 安川電機 | 工作機械に部品として用いられるサーボモータ |
| DMG森精機 | マシニングセンタ（MC）・数値制御（NC）旋盤・5軸加工機 |
| THK | 工作機械の構造部品となるボールねじなどのアクチュエータ |
| アマダ | 金属加工機械（板金機械、切削・構機、研削盤、精密溶接、プレス） |
| ディスコ | ダイシングソー・レーザソー・グラインダなどの半導体素材の加工 |
| 不二越 | 工作機械部品である切削工具（ドリル等） |
| 牧野フライス製作所 | 切削加工機・形彫放電加工機・ワイヤ放電加工機・レーザ加工機 |
| コマツ | 自動車向けの専用工作機、電池製造装置、研削盤、画像処理装置、搬送装置 |
工作機械営業の仕事
上記では工作機械の部品メーカーと工作機械メーカーについて説明をしました。
工作機械部品メーカーの営業であれば顧客は当然工作機械メーカーになります。
工作機械メーカーの営業であれば、顧客は各種業界の製造業になります。
具体的には機械部品を製造する会社の生産設備を購入・設計・管理をする担当者が商談相手になります。
顧客となる製造業は全世界に存在していますので、グローバルな仕事になります。
- 顧客の困りごとのヒアリング
- 顧客への商品提案と見積もり提示
- 価格・納期調整
- 研究・開発部門への市場ニーズのフィードバック
- カタログ製作、展示会出展
メーカー営業の仕事内容と転職方法を現役社員が解説【BtoB / BtoC】 | TERAO｜メーカー営業への転職 (terao-business-blog.com)
工作機械営業のやりがい
メーカーで働く上で一番大事な点は”やりがい”に共感できるか否かです。
メーカーは総合商社・コンサルほど給与が高くありません。
しかし、他業界では得られない特別なやりがいがあります。だからこそ私はメーカーの営業職を続けています。
やりがいは人の好みに左右されますので、以下のやりがいに自分が少しでも共感できそうであるか確認してみて下さい。
- モノづくりは無くならないので長期的に働ける
- マザーマシンと言われるだけあり世界のモノづくりの基盤となる仕事
- ハードウェアの世界であり自分の仕事の成果が形となって見える
- グローバル市場のため英語を使いながら海外出張・海外駐在もあり
- 法人営業として競合他社を出し抜き担当顧客へのスペックインを成し遂げた時は最高
- 工作機械は生産品質・効率の要であり顧客企業の競争力への貢献を実感できる
工作機械メーカー営業への転職活動志望動機を作文する際の参考にもなると思います。
メーカー営業の志望動機と自己PRで差別化する方法を社歴10年の社員が紹介 | TERAO｜メーカー営業への転職 (terao-business-blog.com)
工作機械営業の辛いところ
転職活動をする際には必ずその業界・仕事ならではの辛いところを確認しておくことが重要です。
なぜなら求人情報には良いことしか書いていないからです。
短所を調べずに入社すると転職後に後悔することになります。
- 納期調整で顧客と自社の生産管理との間で板挟みに
- 法人営業なので接待は多い
- 自社の開発部門、顧客ともに年長者と仕事をする
【現役社員の本音】メーカー営業はきつい？転職検討者が知るべき４つのこと | TERAO｜メーカー営業への転職 (terao-business-blog.com)
工作機械業界の展望
家電・スマホ・自動車などの多くの業界で中国・韓国のメーカーが世界で競争力を高めているのはご存じかと思います。
工作機械業界も例外ではありません。
例えば中国の北京精雕科技集団は日本最大の工作機械展示会であるJIMTOFに出展し卵への表面加工行うデモンストレーションで話題を呼びました。
工作機械は高い精度と技術を求められる製品でしたが、新興国でもコントローラー、モーター、アクチュエータを日本・ドイツ企業と遜色なく製造できるメーカーが続々と台頭しているため工作機械メーカーが続々と増えています。
ご推察の通り彼らの強みは低価格にあります。日本の工作機械メーカーは付加価値をつけて価格だけの勝負にならないように試行錯誤を続けています。
近年の技術での差別化要素は何かというと、IoT化 (Internet of Things: モノのインターネット化)です。
例えば工作機械の稼働データをリアルタイムに収集し遠隔で情報管理をするなどの技術がトレンドになっています。
加工精度での差別化では限界があるため、日本の各工作機械メーカーはこうしたことに取り組んでいます。
工作機械営業に向いている人
工作機械業界に転職するために工作機械の詳しい知識は必須ではありません。
転職してから仕事を通して学ぶことが出来るので安心してください。
工作機械の知識以上に重要な点は以下です。
- 機械とIoTの双方に関心がある人、これから学びたい人
- メーカーの法人営業・海外営業としてのキャリアを歩みたい人
- 対人コミュニケーションの能力を伸ばしたい人
- 全国転勤・海外出張・海外駐在ができる人
工作機械メーカーの転職難易度
工作機械業界では多くの異業種からの転職者がいます。
トップメーカーは当然倍率が高いので転職者難易度は高いでしょう。
一方で工作機械メーカーは複数存在しているので、そういった意味では十分チャンスがあります。
工作機械メーカーへの転職方法
メーカーへの転職はエージェントに登録して求人を検索することがお勧めです。
何故なら、多くのメーカーは自社のHPに求人を掲載せず転職エージェント経由で応募者を募っているからです。
このような求人は一般的に非公開求人と言われています。
求人情報には応募対象者の条件が以下のように記載されています。
【必須条件】○○のスキル、経験があること。◇◇の商品に興味関心があること。
【歓迎条件】△△の資格がある方を歓迎
求人情報を見ることで、貴方が応募した場合に書類選考に通過する可能性があるか否かが分かります。
この求人情報は転職エージェントのサイト経由でしか入手できないケースが多々ありますので、ご注意ください。
しかし、転職仲介会社は無数に存在していますので、どれを選ぶべきか迷うと思います。
私自身が転職活動をした際には5つの転職エージェントに登録していました。
この経験から、多くの転職エージェントの中でも工作機械メーカーへの転職者はAdeccoの活用をお勧めします。
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